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おはなしおはなし(4)

「構想」第5号に載せたものです。
これが、既刊の最後です。
「構想」新刊号は、04,03,23に出ます。

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東広島風俗探訪

難波博孝

その3 スパルタの巻

 目の前に中年のおじさんがいる。僕も中年だ。どちらも、大人になりきれない、いやなりたくない、狭間の世代。「団塊の世代」と「新人類の世代」にはさまれ、何のキャッチフレーズもなく語られる。
 ここは、『スパルタ』。キャンパスパブ。多分、大学生と思われるねえちゃんと、フリーターと思われるねえちゃんが、男達に、人生のなんたるかを教えてくれる、キャンパス。
  
「もう今は、清いものよ。」
「違うんじゃないの。 まだ忘れていないんでしょ?」
「いやあ、彼女は普通に接するし。」
「研究室に来るのか?」
「来るよ。あんなふうになって、僕のゼミからは消えたけど、僕の演習の授業は取っている。」
「なんかしゃべる?」
「ふつう。もうちょっと、ひっかかっていてほしいと思うけど。だから、何もないんだわさ。」
「だわさ、じゃなくて。彼女には何もないと、あなたが思っている、でしょ。 もっと言えば、彼女に何かがあると思うと、何もなかったときあなたが落ち込むから、なにもないことにしている、そんなふうにぐるぐる考えるぐらい、あなたは、恋している、んでしょ。」
 『スパルタ』のねえちゃんは、鋭いわ。
「まあ、一緒に酒を飲んだんだから、いいか。」
「まあな。」
「とは、思えんか。」
「突然、来るんだよ。突然、消えるんだよ。何を…」
「何を思っているかわからん、ふ、「他者」?か?」(半上げで)
「「他者」って?」
ねえちゃんに、柄谷行人でも教えるか。いや、田中実…か?(ここも半上げで)
「彼女、いたよね。夏の研究会で。始めて見たけど、すぐわかった。(笑)ミステリアス(笑)は、戦略?」
「クラスには友達がいないそうだ。なぜ、ここにいるのかわからないって。」
「酒を飲んだとき?」
「いろいろ話したけどね。」
「遠い目(笑)。」
「非他者化戦略 発動!!!」
「何?何?」
「前に話したよね。僕にも似たような学生がいる、いた、って。」
「ふむ、似たタイプだと。」
「ああ、そっちの好みが変わったんだぞ。で、彼女に、この話をしてみた。」
「おお。」
「へえ。二人とも、もてるんだ。」
「かな。」
「痛いね、今は、そのことば。」
「彼女は、言ったよ。その子はずっと待っているはず、って。」
「まさか」
「言葉を拾ってもらえた人のことは、一生忘れないはず。」
「そう。ただ、君が思っているようにその子も思っている、と言っていた。」
「と言うと?」
「あなたには何もないと、彼女が思っている、でしょ。 もっと言えば、あなたに何かがあると思うと、何もなかったとき彼女が落ち込むから、なにもないことにしている、そんなふうにぐるぐる考えるぐらい、彼女は、恋…」
「恋しているとは、言えないだろ? コピー&ペーストして、「あなた」と「彼女」をひっくり返しても、「恋」は、ペースト(Windows では「貼り付け(プッ(笑))」)できない。」
「「恋」と名付けたくなはないんだよ、どっちかというと、「ためらい」かな。」
「何に対して?」
「君に、だよ、もちろん。」
「「ためらい」……」
「まあ、待ってろ。彼女にそのへんのところをメールしてもらおう。」
「いいのか、そんなこと。」
「へえ、いい感じじゃない。ねえねえ、もう寝たの?」
「精神的にはね。でも、この子は、寂しがり屋のセックス。だから、こちらはSになりきらないといかん。ちょっとつらい。だから、保留中。……送ったよ。」
「あの、セット料金の時間、終わりだけど。延長する?」
「決着は、ここでつけなくてもいいか。」
「いやあ、私の目の前で決着して。」
「はああ、まあ、延長しないと儲けもないだろうから。」
「ありがと!」
「メールが来た。」
「直接送ってくれ、といったからね。」
……
彼女の声を聞いて上げて下さい。待つのは苦しいかも知れませんが、彼女は、生きてきてずっと待っていたんです。 ただ、まだまだ試すかも知れません。ずっと試すかも知れません。でも、見捨てないで。でも、入り込まないで。
……
私にとって、この人と今の彼は、はじめて、私の触れて欲しいところに、触ってきた人です。なんの、ためらいもなく。触れて欲しいのに、触れさせたくないようにしていた、ところに。私は驚きました。こんな 人 が いるんだ。 歌や物語なら、あったけど。 
 人 がそんなこと、できるんだ。 信じられない。 信じたい。 
……
「この「私」は、誰の、ことだろう?」
「はあ?」
「「他者」は、結局、僕自身のことか。」
「非自己化戦略」
「この人、あなたのこと、好きじゃないんじゃない?(半上げ)」
「へ、そんなことわかるの?」
「同じ血がながれているよ、この人とあなたは。」
「もしかして、こいつも、か?」
「さあ。でも、この人とその彼女に同じ血が流れていたとしても、そのことが互いに分かったとしても、そんなに、二人とも、幸せじゃない。」
「 人 ?」
「間が、なんか、空いているね。」

スパルタに流れる「血」

 

(『スパルタ』東広島市西条某町 ? ****** 詳細は http://8530.teacup.com/rinkoku/bbs にあるかも)

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