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おはなしおはなし(3)

というわけで、誰からも何の反響もないのですが、
強引に 続けていきます。
なお、反応を個人宛のメールにするのはやめてください(泣)。

「構想」第4号に掲載したものです。

*************
東広島風俗探訪


難波博孝

その2 福山「ファンタジー」の巻

 その日は、実習指導で附属福山中高等学校に行っていた。夜は、その学校のN教官に連れられて「ファンタジー」というクラブに行くことになっていた。実習検討会は思いの外早く終わった。司会したN教官の独壇場だった。実習生の一人は、N教官の華麗で強引な話の裁き方に「泣いた」。N氏は、なにかあせっていた。こんなところで力を使わなくてもいいのに、と思った。僕が彼の「はりきり的あせり」を助長したのかもしれない。だって、彼は僕のなかに彼自身を見ようとして、結局彼自身のなかに彼自身を発見しているのだもの。
 
 そう、そう。実習検討会の前、かなり時間があったし、お昼に出た豪華弁当を全部食べたもので腹ごなしもかねて、附属の周りを歩いてみたんだ。びっくりした。僕が小さい頃住んでいた、マッチ箱のような公営住宅が、いっぱあい並んでいる。附属からある方向に向けて、えんえんと。僕は、こんな家に住んでいた。そこにあったのは、アパート形式で、僕が住んでいたのは平屋という違いはあっても、どっちも、その地域から見ればよそ者が住んでいることに違いはない。一階の部屋には「嘘」のような広さの「庭」がついているところも、同じだ。僕は、母親が夜逃げした父子家庭(娘は水商売)と父親が朝逃げした母子家庭と両親が失踪した祖父母孫家庭と同和地区の男と結婚したために村から放逐された4人家族と村の有力者の妾をやっている(という噂の)母子家庭とが、肩なんか寄せ合わないでいがみあって暮らしていた平屋/長屋・市営住宅に住んでいた。(さて、僕の居た家はどれでしょう。)その家族の家、一つ一つに「庭」があった。で、そんな僕たちはそんな「庭」でなにをすればいい?一つ一つの庭は、一つ一つ貌を変えて、荒れていた。僕の家の庭では、羽振りがよかったころに中途まで作った「池」に、石やら木の葉やら果てはごみまでが堆積していっていた。未来は、徹底的に、埋もれていた。
 そんな「庭」が、ここにもいっぱいあった。ここも、地域でない「地域」だった。ああ、そして、附属学校というのも。おおやけによって、作られた「地域」だ。そして、そこで、はりきっている、N教官。
 
 実習指導が終わって、またまた時間があったので、僕は、N教官のお仕事が終わるまで、福山駅周辺で待つことにした。で、福山駅に行きました。(なお、附属福山学校は、東福山駅が近いのです。なにもない、駅ですう。)福山駅に着いたのが5時ぐらい。駅をバスターミナルの方に出て右を見ると、驚くほどたくさんの、サラ金の看板。壮観ともいっていいかもしれない。「ほんまかいなあ」とも言いたくなるかも。サラ金に対して、差別的な気持ちはありません。殺したい気持ちがあります。僕の生きていた市営住宅群の住人で、サラ金のために、何人死に、何人消えたか。サラ金は、「貨幣」の概念を完全に破壊する、「資本主義装置」なのです。その看板が、いっぱい、見えています。
 そして、湧いてくるぐらい高校生がいる。携帯でしゃべり、メールをし、座り込んでだべり、スカートのなかのパンツを見せている。うじゃうじゃと。あ、なんで附属にいるときは、こんなふうに「うじゃうじゃ」っと思わなかったのだろう。うじゃうじゃいるのに。あの子たちは、高校生じゃないの?時間が過ぎ、暗くなると、ますます、うじゃうじゃ現れてきた高校生たち。サラ金の看板の下で、戯れる青春群像。きっとこの子たちもいつかは、ハートフルに「アイフル」するのだろう。いや、初めては「アコム」か。それとも未来への「プロミス」か。そうして、落ちていけばいいさ。はいあがったところで、何も見えやしないんだから。ねえ、広大生諸君。
 
 待ち合わせの時間が来て、N氏がやってきた。着いていけないほどの早足で、彼は案内し始めた。「ファンタジー」に。途中、地下街を抜けた。なにもない。がらんどうの地下街で、二組のストリートミュージシャンが、なんかやってた。たくさん通るのに、だれも、足を止めない。高校生たちは、勝手にしゃべっている。どこかと似ている。そうだ、改修した後の名古屋駅だ。名古屋駅は、ストリートミュージシャンのメッカだった。毎晩、じゃんじゃんやっていた。お客もいっぱいいた。けれど、あのツインタワー(ニューヨークのではない)への改修が始まってから、全て追い出された。完成後、ミュージシャンたちは戻ってきたが、お客は戻ってこなかった。駅は、通り道という本来の役割に戻った。福山は、改修していないよね。じゃあ、なぜ、「たまり場」にならないの?福山は、地域なの?
 
 アーケードを抜け、多分アーケードがあっただろう商店街を抜け(若者を呼ぶためにアーケードをはずし、街灯を点け、ベンチをこしらえている、牛乳屋と端切れ屋と「洋品店」と「紳士服オーダーメイド」の前に)、暗闇を歩くこと何分かで、僕たちは、ようやく「ファンタジー」に着いた。
 
 「ファンタジー」はまだやっていなかった。
 
  おばちゃんが、掃除をしていた。「え、この人が、ママ?」僕たちは、強引に店に入った。おばちゃんが、「ボトル入れますか?」と聞いてきた。普通、入れるのが礼儀だろう。だって、セット料金が3300円だぜ。そんな金額で、飲んで食べてお姉ちゃんとしゃべられた日には、店はつぶれてしまう。ボトル入れない客は、一見(いちげん)で消える、最低の客。サービスも、望めない。だけど、このおばちゃんだぜ。「あ、ボトルはいいです。」
 女の子が一人だけやってきてた。フィリピーナだった。この娘と3人で、僕たちは在日外国人問題について真剣に話し合った。あと、ダンス方面の話題でも盛り上がった。(N氏はジャズダンスの名手。僕は、半裸踊りの名手)話しているうちに、僕は、酔っていった。この娘は、日本語が本当に上手だった。男はいないようだ。いや、わからん。たぶん、いないだろう。
 別の女の子がやってきて、4人になった。この子は、ほんまに素人さんみたいな娘だった。ほとんどしゃべらず、僕たちの話を聞いていた。ときどき、「そうなんだあ」と言っては、ほほえみを返してくれた。別の客が来て、フィリピーナはそっちへ行った。3人になっても、この「素人」娘は、聞き役に徹していた。僕たちは夢中になって、国語教育の悪口やどこかの学校の悪口や誰かの悪口を言いまくった。そしておきまりの「ところでさあ、僕たちどんな仕事しているように見える?」
 
 水商売の女の子は、お客がどんな職業しているか、ほとんど興味ないという。どんな職業であれ、どんなふうに仕事しているかに興味がある。ばりばり仕事してお金を儲けているとか、部下に慕われるような仕事をしているとか、上役にへこへこしているだとか、そんなことだ。話しているうちに、この人はどんな「仕事ぶりか」を見抜き、その人に合わせた会話の内容とテンポを作り上げるという。彼女達にとって大事なのは、「お客が気持ちよく会話して帰る」ことなのだから。でも、たいがいの男は、「お、こいつは俺のことよくわかっているわい。きっと馬が合うかも。うまくいけば、体も合うかも。」という、ファンタジーを抱く。
 
 僕たちは、最初は売れないダンサーだの、食いはぐれた役者だのといっていたが、言いたくて仕方がなかった自分たちの素性を、結局名刺入りで「告白」した!!
 
 女の子は二人になっていた。その娘は、ママの娘だった。ママは、あのおばちゃんではなかった。ママもお店に出てきていた。ママもママの娘も、「こりゃかなわんわい」的アダルトチック光線と「でも、大丈夫よ。何でもお話しして」的光線がいっぱああい出ていた。僕たちは、この娘二人と少し向こうにいるフィリピーナとその奥にいるママに向かって、際限もなく、国語教育の悪口やどこかの学校の悪口や誰かの悪口を言いまくった。素性がしれたから、もう怖いものなんかないわい!
 
 帰る時間が気になっていた。帰りたいと言うことではなかった。福山から我が駅白市までは、1時間に1本ぐらいしかその時間帯では電車がなかった。「ファンタジー」に少しとどまるということは、ファンタジェンにずっととどまるということであった。僕は、まだまだ際限もなくしゃべっていたかった。ここにいる全てのスタッフは、「聞いていてくれる」。
 だが、僕には、意地もあった。「だから、ファンタジェンからは時間が来たら現実に戻る、そしたらちょっとばかし成長している」的おち、なのでしょ」ではない。僕は、確かに「ファンタジー」の住人ではない。じゃあ、戻るところはあるのか?この店にいても、この店を出ても、僕は現実の世界から出ることはできない。だから、帰る時間が気になっていた。「ファンタジー」は、現実の世界の中でやっぱり分節化されなければならない。僕の持っている時間割の中に入れてあげなくてはならない。超時間的存在にしてはいけない。
 
 福山の公営住宅群の向こうに見えた、僕たちの市営住宅群で教えられたことは、「時間通りに、サラ金が取り立てに来る」ということだったのだ。夢を見てはいけない。
 
 「ファンタジー」からは呼んでもらったタクシー(お供と古い言葉では言う)で福山駅に戻った。歩いてきた道は、車で走れば1分もかからなかった。
 
(福山市昭和町「ファンタジー」http://www.ban-ban.com/feature/010604-3/ )

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コメント

琉那さま、ようこそ。

「劇的な人生」いよいよ新展開です。

琉那さまの、人生をこれから随時
載せさせていただきます。

「劇的」ということばの、本当の意味を
みなさまに、お教えしましょう。

こちとら、比喩で、「劇」ということばを
使ってんじゃないんで。

はじめまして。

私は名前をいっぱいもってます。そのうちどれでもよかったのですが……
hirotaka氏の、フショーの弟子です。漢字がわからんのではなく、いろんな字があてはまるので、敢えてカタカナ。

わたしは、幻想と妄想の違いがわかりません。一日の半分は、現実でないとこで生きてるようなものなのですが…

お前、学校でなにを勉強して来たんじゃ!?とか言います?

あれ?
学校って、勉強するトコだったっけ???

まぁ。
それはおいといて……

親指一本だけで繋がっている、愛しい人がいます……灯りを消した部屋ので、肌のかわりにコトバばかりを重ねる…
痛くて切ないけど、これは全部うそですか?

あたしの………

彼の…

幻想?
妄想??

あぁ。今夜もお呼びだ……

はじめまして。

私は名前をいっぱいもってます。そのうちどれでもよかったのですが……
hirotaka氏の、フショーの弟子です。漢字がわからんのではなく、いろんな字があてはまるので、敢えてカタカナ。

わたしは、幻想と妄想の違いがわかりません。一日の半分は、現実でないとこで生きてるようなものなのですが…

お前、学校でなにを勉強して来たんじゃ!?とか言います?

あれ?
学校って、勉強するトコだったっけ???

まぁ。
それはおいといて……

親指一本だけで繋がっている、愛しい人がいます……灯りを消した部屋ので、肌のかわりにコトバばかりを重ねる…
痛くて切ないけど、これは全部うそですか?

あたしの………

彼の…

幻想?
妄想??

あぁ。今夜もお呼びだ……

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