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2004年3月

琉那さんからいしださんへ

琉那さんから、いしださんに返事が来ました。

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いしださん。

コメントいただいたのになかなか反応を返せずごめんなさい。言葉を選んで、考えて、書こうとしていたのですが、読み返すと嘘くさかったり失礼かもしれないこと書いてたりで………言葉なんてややこしいもん、なきゃいいのに(苦笑)

今もやっぱり、なんて書いていいのかわかんないので、自分のことばかり書いてしまいますが……
私とご主人様には、行き着くところすらありません。
二つ折りの携帯電話の中。明かりを消して目を閉じた闇の中。「私のご主人様」はそこにしかいないし、「ご主人様の私」もそこでしか存在できません……
あ。
一つ、わすれてました。目を閉じることが許されない日常の、白昼夢の中…
私はあの人の声は知っていますが、唇を知りません。あの人の顔を知っていますが、どんな風に微笑い、泣くのか知りません。あの人の愛撫を知っていますが、肌の匂いを知りません………
今「知っている」と言ったことだって、私が勝手にそんなつもりになってるだけかもしれない。

貴女のことをほしいと言ってくれた人が、貴女のすぐ横にいる。
私にとってそれは、それだけで、とてもうらやましいことです。…とても怖いことでもあるのですが。
まぁそれはまた、いつかお話するかもしれないし、しないかもしれませんf^_^;

ひとつだけ訊いていいですか。

貴女も彼も、怖がりなのですか………?

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ということです。

いかがいたしましょうか。


琉那のおだやかな日常(3)

琉那さんの連載、続けます。

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さて。
ご主人様とのことを、お話しするんでしたね。

いまのご主人様とは、某マニア向けサイトで、雑談掲示板にカキコしてて知り合いました。
もう半年以上になりますが、リアル調教にはまだすすんでいません。

怖いからです。

ご主人様が、ではありません。
なんぼあたしが変態だといっても、携帯メールの中でだけといっても、信用できない男の人の前で脚を開いたり排泄したりはできません……

ゲームやビデオなんかで「好きでも何でもない男に拉致監禁されて、いきなりなぶりものにされても悦ぶ女」みたいのがありますが、あたしの知るM女さんたちは皆、信頼できない男の命令などきけないし、ましてや身体を縛らせるなんて絶対できない、と言います。あたしもそうです。
いつも遊びにいくサイトの管理人さんの信条が、「愛のないSM行為はただの暴力」ですから、たまたまこういうタイプの方ばかりが集まってるのか、その辺はよくわかりませんが……経験値低いので。RPGで言ったら、「ぬののふく」と「こんぼう」で、街のすぐ外でスライム倒してるくらい(笑)

えらく話が逸れましたね。戻りましょう。

なにが怖くて逢えないでいるのか………

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続きは、また。
読みたいでしょ(笑)。

隷属知:ブレイク

 監獄の状況は耐え難いものです。拘留者には人間に値する生活が必要です。彼らのもつ権利が尊重されていないからです。私たちはこのスキャンダルを白日の下に曝け出そうと思っています。
 最近起こった出来事は新聞や雑誌に警鐘を鳴らしてきました。しかし、私たちは運動が衰退していき、忘れ去られていくことを望みません。現実的な変化が起こるようにしなければならないのです。だからこそ、私たちは、大規模な長期にわたる世論に対するキャンペーンを立ち上げ、これを続行したいのです。
 私たちは監獄で実際に何が起こっているのかを(それに関して行政当局が語ること以外にも)知るために、みなさんの助けを必要としています。施設の状態はどのような様子か、衛生状態、管理当局はどのような様子か、嫌がらせや処罰はどのようなものか、面会状況、面会室はどのようになっているか、家族と拘留者との関係はどのようなものか、管理当局が尊重しない権利はどのようなものか。
 こうした情報を収集するにあたって、どうか手伝っていただけませんでしょうか?拘留者と元拘留者の助けを借りて、同封した質問表の回答欄を埋める必要があるのです。
 私たちのうちの誰かに質問票を提出することができない場合には、GIP(監獄情報グループ)(ヴォジラール二八五番地)宛てに連絡をとってください。
 みなさんに感謝します。
                                   監獄情報グループ


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ミシェル・フーコー  1971年2月 拘留者とその家族にあてた文書  西山雄二訳
フーコは、監獄情報グループの設立者。
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隷属知。 隷属されるものの知。隷属された位置の知。
フーコーさんは、「隷属知」を「科学的な知」から解放することを考えたんだそうです。
「科学的な知」というのは、「むずかしい理屈」ということでしょうか。
フーコーさんは、拘留者とその家族の支援を支援する中で、いろんなことを考えていたんですね。
フーコーさんも、精神的な拘留者だったのでしょうか。
当事者じゃないけど、当事者みたいな人。
ところで、70年以後世界(特にヨーロッパ)では左翼が大きな発展を遂げていきます。
教条的なマルクス主義から、当事者性を帯びた政治運動へと発展します。

じゃあ、日本は?
ははははは、ずっと(ほんの一部を除いて)同じ政党が政権を握っていましたね。

はい。ブレイク、終わり。

琉那のおだやかな日常(2)

琉那さんの連載、第2回です。結構連続させてみました。

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で、大学のとき…

当時、とても気になる先生がいたのですが(もちろん師匠じゃないよ!笑)、ある日、自販機でコーヒーを買い、すぐ傍のベンチに座って飲んでいると、その先生がやってきて飲み物を買い、少し離れたところに座りました。
周りには、他に誰もいません。
そのとき、ドキドキしながらあたしが考えたことは…………
「その、ちょっとくたびれたネクタイで手首を縛られて、乱暴にされたい…………」

なに?

まて、自分!?いま、なんてった??

そういえば、TVや映画を観ていても、ロマンチックなラブシーンより、監禁・拘束されてなぶられるシーンのがドキドキするよな…………

はい、決定。
あんた変態だわ。

その瞬間、吸ってた煙草の煙にむせて、コーヒーが少し膝にこぼれました。白いスカートなのに。あ〜〜ぁ。

その後、やり場のない歪んだ欲求を抑えたまま、サイコな芝居を書いたりえっちっぽい衣装でバンドやったりしてましたが………なんか気がついたら、こんなことに(汗)

ご主人様とのことは、次から書きますね。
今日のトコはこのくらいにしといてあげます(笑)
んではまた。

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いかがでしたか。
琉那さんは、感想をお待ちしている、ということでした。

新連載 琉那のおだやかな日常(1)

以前コメントで予告したように、琉那さんが自分で描いた日常の姿を随時載せていきたいと思います。

私と琉那さんは、本当に長い間のつきあいです。(ただし、私は琉那さんのご主人ではありません)
また、表現者としての同志でもあります。(琉那さんは私を「師匠」と呼びます。)

今回、琉那さんの了解を得て、彼女の日常を載せていただくことにしたのには、いくつか
わけがあります。

が、そんなことは、みなさんには関係ないでしょう。

どうか、琉那さんのおだやかな日常を、おだやかな日常を、「お楽しみ」ください。

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てなわけで。

親を泣かせて30余年。
近頃は、とあるお方のメール愛奴をしてたりします……(てかさぁ師匠、琉那「さま」はヤメてくださいよぅ。あたしは卑しい雌犬。吐き捨てるように、呼び捨ててっ☆)
どこからお話ししましょうか。

きっかけからかな……

自分がアヤシいと自覚したのは、十代後半です。
高校くらいのとき、終わりたいのに終われないオトコとドロドロゴチャゴチャしてましたが、こいつがまたとんでもない奴で…
アンパン漬けのDVストーカー野郎で、勝手な妄想をしては嫉妬に狂ってあたしを追い回し、殴る蹴る詰る泣く、を繰り返すのです。黙ってやられてるほどおとなしい女ではありませんでしたが、つらくて気が狂いそうでした。

でしたが…

ある日、いつものように奴の部屋に引きずり込まれ、殴られてぐったりしていると、何を思ったか奴が紐であたしの手首を縛り始めたのです。
当然抵抗しました。が、その前に大暴れ(笑)してますし、殴られてますからあちこち痛くて、思うように身体が動きません………
殺されるかもと思いました。
でも、奴が奪いたかったのは、命ではなかったようです。
這って逃れようとするのを、引き戻され、ねじ伏せられて、へたくそなディープキスで声を封じられた時……………
全身に、激しい電流が走ったようでした。
妙な感覚。
イヤなのに。すごく怖いのに。
身を捩り、泣きわめき、打たれながら、あたしは興奮していたのです……
結局、そのときは、奴の気持ちばかりが暴走して躰がそれにともなわず、未遂に終わったのですが………
そのシーンはいつまでも繰り返しフラッシュバックし、他に好きな人ができても、気がつくと、相手だけを入れ替えて同じ妄想に浸っている自分がいました。

あたしおかしいかも。
それ以来、ずっとそう思いながらも、否定し続けていました。

で、大学のとき…

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以下、いつかの次回に続きます・・・・・

おはなしおはなし(4)

「構想」第5号に載せたものです。
これが、既刊の最後です。
「構想」新刊号は、04,03,23に出ます。

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東広島風俗探訪

難波博孝

その3 スパルタの巻

 目の前に中年のおじさんがいる。僕も中年だ。どちらも、大人になりきれない、いやなりたくない、狭間の世代。「団塊の世代」と「新人類の世代」にはさまれ、何のキャッチフレーズもなく語られる。
 ここは、『スパルタ』。キャンパスパブ。多分、大学生と思われるねえちゃんと、フリーターと思われるねえちゃんが、男達に、人生のなんたるかを教えてくれる、キャンパス。
  
「もう今は、清いものよ。」
「違うんじゃないの。 まだ忘れていないんでしょ?」
「いやあ、彼女は普通に接するし。」
「研究室に来るのか?」
「来るよ。あんなふうになって、僕のゼミからは消えたけど、僕の演習の授業は取っている。」
「なんかしゃべる?」
「ふつう。もうちょっと、ひっかかっていてほしいと思うけど。だから、何もないんだわさ。」
「だわさ、じゃなくて。彼女には何もないと、あなたが思っている、でしょ。 もっと言えば、彼女に何かがあると思うと、何もなかったときあなたが落ち込むから、なにもないことにしている、そんなふうにぐるぐる考えるぐらい、あなたは、恋している、んでしょ。」
 『スパルタ』のねえちゃんは、鋭いわ。
「まあ、一緒に酒を飲んだんだから、いいか。」
「まあな。」
「とは、思えんか。」
「突然、来るんだよ。突然、消えるんだよ。何を…」
「何を思っているかわからん、ふ、「他者」?か?」(半上げで)
「「他者」って?」
ねえちゃんに、柄谷行人でも教えるか。いや、田中実…か?(ここも半上げで)
「彼女、いたよね。夏の研究会で。始めて見たけど、すぐわかった。(笑)ミステリアス(笑)は、戦略?」
「クラスには友達がいないそうだ。なぜ、ここにいるのかわからないって。」
「酒を飲んだとき?」
「いろいろ話したけどね。」
「遠い目(笑)。」
「非他者化戦略 発動!!!」
「何?何?」
「前に話したよね。僕にも似たような学生がいる、いた、って。」
「ふむ、似たタイプだと。」
「ああ、そっちの好みが変わったんだぞ。で、彼女に、この話をしてみた。」
「おお。」
「へえ。二人とも、もてるんだ。」
「かな。」
「痛いね、今は、そのことば。」
「彼女は、言ったよ。その子はずっと待っているはず、って。」
「まさか」
「言葉を拾ってもらえた人のことは、一生忘れないはず。」
「そう。ただ、君が思っているようにその子も思っている、と言っていた。」
「と言うと?」
「あなたには何もないと、彼女が思っている、でしょ。 もっと言えば、あなたに何かがあると思うと、何もなかったとき彼女が落ち込むから、なにもないことにしている、そんなふうにぐるぐる考えるぐらい、彼女は、恋…」
「恋しているとは、言えないだろ? コピー&ペーストして、「あなた」と「彼女」をひっくり返しても、「恋」は、ペースト(Windows では「貼り付け(プッ(笑))」)できない。」
「「恋」と名付けたくなはないんだよ、どっちかというと、「ためらい」かな。」
「何に対して?」
「君に、だよ、もちろん。」
「「ためらい」……」
「まあ、待ってろ。彼女にそのへんのところをメールしてもらおう。」
「いいのか、そんなこと。」
「へえ、いい感じじゃない。ねえねえ、もう寝たの?」
「精神的にはね。でも、この子は、寂しがり屋のセックス。だから、こちらはSになりきらないといかん。ちょっとつらい。だから、保留中。……送ったよ。」
「あの、セット料金の時間、終わりだけど。延長する?」
「決着は、ここでつけなくてもいいか。」
「いやあ、私の目の前で決着して。」
「はああ、まあ、延長しないと儲けもないだろうから。」
「ありがと!」
「メールが来た。」
「直接送ってくれ、といったからね。」
……
彼女の声を聞いて上げて下さい。待つのは苦しいかも知れませんが、彼女は、生きてきてずっと待っていたんです。 ただ、まだまだ試すかも知れません。ずっと試すかも知れません。でも、見捨てないで。でも、入り込まないで。
……
私にとって、この人と今の彼は、はじめて、私の触れて欲しいところに、触ってきた人です。なんの、ためらいもなく。触れて欲しいのに、触れさせたくないようにしていた、ところに。私は驚きました。こんな 人 が いるんだ。 歌や物語なら、あったけど。 
 人 がそんなこと、できるんだ。 信じられない。 信じたい。 
……
「この「私」は、誰の、ことだろう?」
「はあ?」
「「他者」は、結局、僕自身のことか。」
「非自己化戦略」
「この人、あなたのこと、好きじゃないんじゃない?(半上げ)」
「へ、そんなことわかるの?」
「同じ血がながれているよ、この人とあなたは。」
「もしかして、こいつも、か?」
「さあ。でも、この人とその彼女に同じ血が流れていたとしても、そのことが互いに分かったとしても、そんなに、二人とも、幸せじゃない。」
「 人 ?」
「間が、なんか、空いているね。」

スパルタに流れる「血」

 

(『スパルタ』東広島市西条某町 ? ****** 詳細は http://8530.teacup.com/rinkoku/bbs にあるかも)

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最後の賭け

インディアンポーカーというゲームを知っていますか。

プレイヤーに配られたトランプカードの中で、より強いカードを持つプレイヤーが勝つというゲームです。
ただし、自分に配られたカードは見えず、相手のカードのみが見えるため、心理的な駆け引きが重要となります。

というものです。

私は、大学時代、あるとても賭け事の強いやつと一晩中いろいろな
賭け事をやって、最後に、このインディアンポーカーで、完全に
相手を打ちのめしたのでした。

その時、言われたのは、「おまえは、あまりにも定石を無視しすぎるので
全く読めない」という言葉でした。
それ以来、私は、「賭け」には圧倒的な自信を持っていました。

負けました。

ごく最近、トランプを使わない、インディアンポーカーに
私は、負けてしまいました。

自分のカードを予測しては、このゲームには勝てません。
ただ、相手のカードだけを見ることが、このゲームの
唯一の必勝法です。
(相手の表情などを見て自分のカードの数字を想像するなんてことは
愚の骨頂です)

私は、自分のカードを予想してしまったんです。

これを、最後の賭けと言ってしまったので、
再戦はできない・・・・・

だけど。

最後の賭けと言っている以上は、
まだ、最後ではないんですね。
本当の「最後」に来て欲しくないから、言っているのかもしれません。

これは、未練ではなく。
やはり、再戦、しそうです。
本当の「最後」にするために。

返事!?

おはなしおはなし(1)の愛ちゃんから返事が来ました!?

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ふ〜ん そんなことがあったんだ。
でも、言っておくけど 私はそんな派手派手ネクタイのおじさ
んなんて知らないわよ!
私はねえ 結構古風な女なのよ プライド的に言うとね。
その時の気持ちに合わせて便せんの色や模様を考えたり好きな
香を一緒に贈ったりするのも好きなの。
でも、何よりも手紙が届くまでの時間が好きなのかもね。
その時間のなかで、私の理想が膨らむの。うんとね。
私はもしかしたらあなたのことより自分の理想を愛しているのかもしれないな。
結局なまみの人と向き合うのが苦手なのかもしれない。
何 この手紙 本当 字なんかぜんぜん読めない 意味不明
おまけにどんどんぬれていく。
この手紙は、あなたのパンツに汚され、水に濡れて、なんてか
わいそうなんでしょう。
今度再生してくるときは大切にしてもらうのよ!
たくさんのことを伝えてくれてありがとう
そして さようなら

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おはなしおはなし(3)

というわけで、誰からも何の反響もないのですが、
強引に 続けていきます。
なお、反応を個人宛のメールにするのはやめてください(泣)。

「構想」第4号に掲載したものです。

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東広島風俗探訪


難波博孝

その2 福山「ファンタジー」の巻

 その日は、実習指導で附属福山中高等学校に行っていた。夜は、その学校のN教官に連れられて「ファンタジー」というクラブに行くことになっていた。実習検討会は思いの外早く終わった。司会したN教官の独壇場だった。実習生の一人は、N教官の華麗で強引な話の裁き方に「泣いた」。N氏は、なにかあせっていた。こんなところで力を使わなくてもいいのに、と思った。僕が彼の「はりきり的あせり」を助長したのかもしれない。だって、彼は僕のなかに彼自身を見ようとして、結局彼自身のなかに彼自身を発見しているのだもの。
 
 そう、そう。実習検討会の前、かなり時間があったし、お昼に出た豪華弁当を全部食べたもので腹ごなしもかねて、附属の周りを歩いてみたんだ。びっくりした。僕が小さい頃住んでいた、マッチ箱のような公営住宅が、いっぱあい並んでいる。附属からある方向に向けて、えんえんと。僕は、こんな家に住んでいた。そこにあったのは、アパート形式で、僕が住んでいたのは平屋という違いはあっても、どっちも、その地域から見ればよそ者が住んでいることに違いはない。一階の部屋には「嘘」のような広さの「庭」がついているところも、同じだ。僕は、母親が夜逃げした父子家庭(娘は水商売)と父親が朝逃げした母子家庭と両親が失踪した祖父母孫家庭と同和地区の男と結婚したために村から放逐された4人家族と村の有力者の妾をやっている(という噂の)母子家庭とが、肩なんか寄せ合わないでいがみあって暮らしていた平屋/長屋・市営住宅に住んでいた。(さて、僕の居た家はどれでしょう。)その家族の家、一つ一つに「庭」があった。で、そんな僕たちはそんな「庭」でなにをすればいい?一つ一つの庭は、一つ一つ貌を変えて、荒れていた。僕の家の庭では、羽振りがよかったころに中途まで作った「池」に、石やら木の葉やら果てはごみまでが堆積していっていた。未来は、徹底的に、埋もれていた。
 そんな「庭」が、ここにもいっぱいあった。ここも、地域でない「地域」だった。ああ、そして、附属学校というのも。おおやけによって、作られた「地域」だ。そして、そこで、はりきっている、N教官。
 
 実習指導が終わって、またまた時間があったので、僕は、N教官のお仕事が終わるまで、福山駅周辺で待つことにした。で、福山駅に行きました。(なお、附属福山学校は、東福山駅が近いのです。なにもない、駅ですう。)福山駅に着いたのが5時ぐらい。駅をバスターミナルの方に出て右を見ると、驚くほどたくさんの、サラ金の看板。壮観ともいっていいかもしれない。「ほんまかいなあ」とも言いたくなるかも。サラ金に対して、差別的な気持ちはありません。殺したい気持ちがあります。僕の生きていた市営住宅群の住人で、サラ金のために、何人死に、何人消えたか。サラ金は、「貨幣」の概念を完全に破壊する、「資本主義装置」なのです。その看板が、いっぱい、見えています。
 そして、湧いてくるぐらい高校生がいる。携帯でしゃべり、メールをし、座り込んでだべり、スカートのなかのパンツを見せている。うじゃうじゃと。あ、なんで附属にいるときは、こんなふうに「うじゃうじゃ」っと思わなかったのだろう。うじゃうじゃいるのに。あの子たちは、高校生じゃないの?時間が過ぎ、暗くなると、ますます、うじゃうじゃ現れてきた高校生たち。サラ金の看板の下で、戯れる青春群像。きっとこの子たちもいつかは、ハートフルに「アイフル」するのだろう。いや、初めては「アコム」か。それとも未来への「プロミス」か。そうして、落ちていけばいいさ。はいあがったところで、何も見えやしないんだから。ねえ、広大生諸君。
 
 待ち合わせの時間が来て、N氏がやってきた。着いていけないほどの早足で、彼は案内し始めた。「ファンタジー」に。途中、地下街を抜けた。なにもない。がらんどうの地下街で、二組のストリートミュージシャンが、なんかやってた。たくさん通るのに、だれも、足を止めない。高校生たちは、勝手にしゃべっている。どこかと似ている。そうだ、改修した後の名古屋駅だ。名古屋駅は、ストリートミュージシャンのメッカだった。毎晩、じゃんじゃんやっていた。お客もいっぱいいた。けれど、あのツインタワー(ニューヨークのではない)への改修が始まってから、全て追い出された。完成後、ミュージシャンたちは戻ってきたが、お客は戻ってこなかった。駅は、通り道という本来の役割に戻った。福山は、改修していないよね。じゃあ、なぜ、「たまり場」にならないの?福山は、地域なの?
 
 アーケードを抜け、多分アーケードがあっただろう商店街を抜け(若者を呼ぶためにアーケードをはずし、街灯を点け、ベンチをこしらえている、牛乳屋と端切れ屋と「洋品店」と「紳士服オーダーメイド」の前に)、暗闇を歩くこと何分かで、僕たちは、ようやく「ファンタジー」に着いた。
 
 「ファンタジー」はまだやっていなかった。
 
  おばちゃんが、掃除をしていた。「え、この人が、ママ?」僕たちは、強引に店に入った。おばちゃんが、「ボトル入れますか?」と聞いてきた。普通、入れるのが礼儀だろう。だって、セット料金が3300円だぜ。そんな金額で、飲んで食べてお姉ちゃんとしゃべられた日には、店はつぶれてしまう。ボトル入れない客は、一見(いちげん)で消える、最低の客。サービスも、望めない。だけど、このおばちゃんだぜ。「あ、ボトルはいいです。」
 女の子が一人だけやってきてた。フィリピーナだった。この娘と3人で、僕たちは在日外国人問題について真剣に話し合った。あと、ダンス方面の話題でも盛り上がった。(N氏はジャズダンスの名手。僕は、半裸踊りの名手)話しているうちに、僕は、酔っていった。この娘は、日本語が本当に上手だった。男はいないようだ。いや、わからん。たぶん、いないだろう。
 別の女の子がやってきて、4人になった。この子は、ほんまに素人さんみたいな娘だった。ほとんどしゃべらず、僕たちの話を聞いていた。ときどき、「そうなんだあ」と言っては、ほほえみを返してくれた。別の客が来て、フィリピーナはそっちへ行った。3人になっても、この「素人」娘は、聞き役に徹していた。僕たちは夢中になって、国語教育の悪口やどこかの学校の悪口や誰かの悪口を言いまくった。そしておきまりの「ところでさあ、僕たちどんな仕事しているように見える?」
 
 水商売の女の子は、お客がどんな職業しているか、ほとんど興味ないという。どんな職業であれ、どんなふうに仕事しているかに興味がある。ばりばり仕事してお金を儲けているとか、部下に慕われるような仕事をしているとか、上役にへこへこしているだとか、そんなことだ。話しているうちに、この人はどんな「仕事ぶりか」を見抜き、その人に合わせた会話の内容とテンポを作り上げるという。彼女達にとって大事なのは、「お客が気持ちよく会話して帰る」ことなのだから。でも、たいがいの男は、「お、こいつは俺のことよくわかっているわい。きっと馬が合うかも。うまくいけば、体も合うかも。」という、ファンタジーを抱く。
 
 僕たちは、最初は売れないダンサーだの、食いはぐれた役者だのといっていたが、言いたくて仕方がなかった自分たちの素性を、結局名刺入りで「告白」した!!
 
 女の子は二人になっていた。その娘は、ママの娘だった。ママは、あのおばちゃんではなかった。ママもお店に出てきていた。ママもママの娘も、「こりゃかなわんわい」的アダルトチック光線と「でも、大丈夫よ。何でもお話しして」的光線がいっぱああい出ていた。僕たちは、この娘二人と少し向こうにいるフィリピーナとその奥にいるママに向かって、際限もなく、国語教育の悪口やどこかの学校の悪口や誰かの悪口を言いまくった。素性がしれたから、もう怖いものなんかないわい!
 
 帰る時間が気になっていた。帰りたいと言うことではなかった。福山から我が駅白市までは、1時間に1本ぐらいしかその時間帯では電車がなかった。「ファンタジー」に少しとどまるということは、ファンタジェンにずっととどまるということであった。僕は、まだまだ際限もなくしゃべっていたかった。ここにいる全てのスタッフは、「聞いていてくれる」。
 だが、僕には、意地もあった。「だから、ファンタジェンからは時間が来たら現実に戻る、そしたらちょっとばかし成長している」的おち、なのでしょ」ではない。僕は、確かに「ファンタジー」の住人ではない。じゃあ、戻るところはあるのか?この店にいても、この店を出ても、僕は現実の世界から出ることはできない。だから、帰る時間が気になっていた。「ファンタジー」は、現実の世界の中でやっぱり分節化されなければならない。僕の持っている時間割の中に入れてあげなくてはならない。超時間的存在にしてはいけない。
 
 福山の公営住宅群の向こうに見えた、僕たちの市営住宅群で教えられたことは、「時間通りに、サラ金が取り立てに来る」ということだったのだ。夢を見てはいけない。
 
 「ファンタジー」からは呼んでもらったタクシー(お供と古い言葉では言う)で福山駅に戻った。歩いてきた道は、車で走れば1分もかからなかった。
 
(福山市昭和町「ファンタジー」http://www.ban-ban.com/feature/010604-3/ )

バムセの会

バムセの会 3月例会は、3月13日です。
詳しくは、こちら

おはなしおはなし(2)

というわけで、「構想」に載せた、駄文の第2作です。
ここから、「東広島風俗探訪」の連載が始まります。

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東広島風俗探訪


序章 心構えの巻
 今回から、「東広島風俗探訪」を連載することになりました。よろしくお願いいたします。ええ、どうぞよろしく。で、今回はどのようなところにおいでになったので?いや、今回は時間とお金の関係でどこにも行けなかったので、これからの連載に向けて、心構えを一つぶっておこうかと。いやいや、それでは困りまする。せっかくの初手、ば〜んとやってもらわんことには、雑誌全体にもよくない影響が。なにをおっしゃる。私がこれから連載するものは、そんじょそこらの「風俗物」ではござらぬ。「〜スポーツ(〜には、東京、中京、大阪、九州などがはいる)」にあるごとき 「風俗物」は、いたずらに男心を惑わし、邪な心を奮い立たせるもの。我が輩がやりとげんとするものはそのような「風俗物」ではござらぬ。「風俗」の「風俗」たる所以を、読み手諸君に認識していただくものである。であるから。いや、おっさん、それはわかったって。で、具体的には、どうしたいんや。くだくだご託をならべとかんと、さっさと本題にはいったらんかい。いや、そんなご無体な。やかましい!!人が下手にでたら、ええ気になりやがって、ええかげんにせえ。いやああああ、そんなこと、もっと言って!!???え?ま、ええわ。はよ次に行かんかい!!!ああ、それそれ!そのことばが、私を痛めつける。そのことばが、私の生きていく証。あなたに、なにかを吐かれることで、わたしは、その都度、あなたの愛を確かめていく。あなたは、そのことがわかって、ことばを吐く。鞭をふるう。私は、落ちていきながら、行き着くところが、あなたとの、甘美「共同体(コミューン)」であることを知っている。知っていて、あなたはなにも言わない。何も言わないからこその、コミューン。ね?だから、こう言ってしまったら、あなたとの「関係」は終わってしまうの。「説明」のことばでは、コミューンには行けないのよ。ね。ゆるして。もう、わたしは、あなたの「奴婢」では、もうないのよっ。せんせ・・・・・私は、別に、せんせとそんな関係では・・違うのっ!!!もう終わったの。始まったときに、私は「説明」をしたときに、終わったのよっ。せんせい・・・なんで女言葉に。奴隷を表象することばは、「女言葉」しか発明されていないさかいに。(序章終了)

おはなしおはなし(1)

私が表現したくてもできないでいたこの何年かの間、その苦しさを救ってくれたのは
「構想」という雑誌でした。
私はこの「構想」に、小説ともなんともつかないものを書き連ねていくことで
自分がだいぶん楽になったのです。
その「構想」が編集人の「旅立ち」のために終刊となることになりました。
そのことを惜しみつつ、また、今まで「場」を提供してくれたことに感謝して
今まで「構想」に載せてきた自分の表現を、ここに晒してみようと思います。
なお、「構想」は、ここでも読めますので、他の人の作品はぜひこちらでお読み下さい。

では、私が最初に載せた駄文を。「構想」第2号でした。

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寒くなってきたね。ちょっと間があいてごめん。
 ところで、名古屋と東広島の間を毎週のように往復していると、いろいろ奇妙なことに出会うよ。今日はその話をしてみるね。
 君も知っているように、僕は、名古屋に自宅を構えながら、仕事の関係で東広島に、ふだんはいる。東広島の家には洗濯機がないものだから、かつ、名古屋の自宅のパソコンが壊れてしまっているものだから、僕はほぼ毎週、愛機iBookと汚れた洗濯物をバッグに詰め込んで帰る。
 新幹線の中というのはなぜか落ち着くので仕事めいたことなんかしちゃおうか、なんて思いながら、重いiBookをバッグから引っぱり出すと、 哀れiBookは、 僕のパンツをひっかぶって新幹線車中に現れる。あわててパンツを脱がし、「ご開帳!!」とばかりラッチを開いてみれば、そこには昨日書きかけの手紙がはさまっていた。「パンツの中の手紙かい!!」と一人ほくそ笑む、気持ち悪い、僕。
 そういえば、昨日の夜書ききれなくて「残りは、明日の新幹線で書こう」と手紙をiBookにはさんだま ま寝てしまったんだった。
 「すみません。」
 「へ、あ、はい。」
 急に、隣の席の派手派手ネクタイおじさんが話し掛けてきたよ。
 「それ、iBookですよね。」
 「あ、そうですけど。」
 「譲ってくれませんか?」
 意味が分かって意味が分からないということは「恐い」ということが、よく分かった。僕は、「くれませんか」の一言で、頭が高速回転に動き始めていた。この場から逃げるためには、愛機をくれてやってもいい。
 「譲って下さい。」
 「いや、このパンツは、か、買ったばかりですので」
 「嘘、でしょう。そのパンツ、古いですよ。」
 「すみ、すみません。嘘つきました。」
 「その手紙、ですけど。」
 「手紙?いや、これは私が昨日書きかけた手紙でして・・あ、いや手書きですけど、多分iBookを台か なんかにして書いていたのだと」
 「それは、私の手紙です。」
 そうか、愛ちゃんはこんな派手派手ネクタイおじさんともつきあっていたのか、電話をかけたらちょっと怒ったような声で、でもすばやく「ごめんね、愛の言葉は手紙にしてね」と言いやがったのは、そういうわけか。じゃなくて。
 「あ、いや、これ、私が昨日書いた手紙です。」
 「それは、確かに、あなたの手紙でしょう。でも」
 「でも?」
 「私の手紙でもあるんです。」
 「は???」
 のぞみが今日はいやに遅い。まだ、新大阪にも着いていない。新神戸付近のトンネルの中で、会話は続く。
 「手紙をよく見て下さい。」
 なんのことやらわからん。愛ちゃんに出す手紙をとにかく見てみた。
 
 それは驚くべきことだった。僕が書きかけた便せん、愛ちゃんへの言葉の後に続くはずの空白に、なにやら焼き印のような模様が並んでいた。
 便せんを焦がしてできた模様、それは確かに、文字だった!!
 「???」
 「これは、私の文字です。いや、正確には、文字の跡です。」
 「わからないです。全然わかりません。」
 「この便せんは再生紙です。」
 「そう、です。」
 「この便せんが前のサイクルで紙だった時に、私の文字が書かれたのです。それが、今、この便せんに再生している・・。」
 あ、それで再生紙と言うのね。じゃなくて。
 「それじゃあ、この便せんの前世が文字になってあらわれたとでも言うの?」
 「文字の前世・・ほほう、あなた、うまいですね。」
 「い、いやあ・・」
 「譲って下さい。」
 速い、この返し。
 「あのね、紙が再生される時はね、いろいろな紙がごちゃごちゃに混ざってどろどろになってそれで、再生されるのでしょう?どうして、前の紙がそのまままた一つの紙になって、しかも、前と同じ組み合わせで繊維が並んだりするわけ?」
 「同じようには並んでいません。けれど、ほら。」
 確かに、文字は読めるようには並んでいない。抜けている所も多い。でも、??。
 「どうして、文字が見えるんですか?どろどろになったはずなのに」
 「紙の繊維にしみ込んだインクは、溶けません。」
 「それが残っていたと?」
 「私が書いた紙が溶かされる時に完全にばらばらにならずに、再び再生されたのでしょうね。」
 そんなことって、と声に出して言いかけたけど。
 「ああ、なるほど。では、なぜ文字が浮かんだのでしょう。」
 と、まるでワトソン。
 「それは、わかりませんね。私にも。」
 って、おじさんも、なぜか探偵、入っている。
 「ただ、しみ込んだインクが熱せられれば、浮き出るとは聞いたことがあります。」
 「・・・あなた、そんなに自分の手紙を追い掛けていた?」
 「・・・手紙は、みんな因縁めいたものでしょう?」
 「えっ、ええ。」
 確かに、メール全盛のこの時代、わざわざ手紙を書くのは、跡を残したいという熱い願望があるから。熱い思いを愛ちゃんに伝えたいから。熱い?そういえば、iBook、今日開けた時熱かったぞ。と、強引な 展開。
 もしかして、スリープのままだった?
 「あの、 どうも昨日コンピュータを終了させずスリープのままで閉じたみたいなんです。 で、 この iBook、最近ちょっとおかしくてスリープにしても時々起きて、またスリープをする、の繰り返しで。」
 「熱くなっていた。」
 「多分。それで、暖められて、文字の亡霊がでやがった、ということかな。」
 「あなたの、ずぼらのおかげですね。」
 むっとするなあ。
 「で、この手紙、ゆずっていただけますか?」
 いや、そういうわけにはいかん。女房に黙って出している、愛ちゃんへの手紙。単身赴任の生き甲斐の手紙を、他人に読まれてなるものか。恥ずかしさ、丸出しだわ。
 「あなたの欲しい、亡霊の文字の部分だけ切って渡せばいいでしょう?」
 「いや、みてごらんなさい。あなたが書いたところにも、私の文字が。」
 あらら、僕が愛ちゃんにしたためた文字と、おじさんが残した亡霊の文字がごちゃごちゃ。なにやら気持ち悪いぐらい、いい感じの模様になっている。縄文式土器のような。
 「あなた、これは出せないでしょう。」
 確かに。しかし、このおじさんも読めないのでは?
 「どうせ、私にももう読めないですよ。ただ、私が書いた文字の亡霊を弔ってやりたいだけで。」
 ちょっと、待って!!この人が書いた文字、ということは、この手紙の前世の手紙も、相手に届いていない?相手に届けれられず、この世から消えていた文字を、なぜこの人は執拗に追い掛けるの?しかも、読んでも、読めないのに。
 のぞみは、新大阪を過ぎ、いつのまにか京都に近付いていた。
 「私は、京都で降ります。すみませんが、この手紙、譲って下さい。」
 僕は、このおじさんが何がしたいのか、ようやくぼんやりわかってきた。このおじさん、手紙を相手に届ける気はなかったんだ。相手に届けるつもりで書いて、それを、郵便システムではなく、リサイクルシステムにほうり投げていたんだ。読めないようになって自分の手許に帰ってくることを願って。
 京都駅が近付いてきた。
 「おねがいします。ずっと、探していました。」
 「これ、あげません。」
 「えっつ?」
 「手紙は、相手に届けましょう。出した人ではなく、出した相手に届けましょう。」
 「誰に?」
 「ははっつ、僕の手紙の相手の愛ちゃんに。あ、愛ちゃんっていうのは、文通相手でしてね、文通というと古くさいですけれど、これがなかなかいいもので。一人暮らしのポストに手紙が届いた時など、どんなに嬉しいか!」
 「探していたのです。それにそれを届けても読めないでしょう?」
 「手紙は文字を読むものではないでしょう?それに、分からなければ、愛ちゃんは聞いてきますよ。聞けるのだから。あ、着きました。じゃあ、お元気で。」
 
 というわけなんだ。今回手紙が遅れたのは、こういうわけなんだ。同封したのが、例の手紙。読めないと思うけれど、がんばって読んで。できたら、僕が何を書いたかこんどの返事で書いてみてよ。当たったら、プレゼントあげるよ。あ、それで、終わったらシュレッダーにかけてこなごなにして。文字の亡霊が二度と復活しないようにね。こっちの手紙じゃないよ。では、返事待ってる。

愛ちゃんへ

難 波 博 孝

FDで学んだこと

一つ前に書いたように、2月28日29日と京都で開かれた
FDの集会に行ってきました。

FDというのは、教師の能力開発という意味で、要するに
教育技術をアップするための集会でした。

その集会でいくつかの分科会があったのですが、
一番印象に残ったことは、発表者の発表スタイルのことでした。

一番上手だったのが、企業人(ベンチャービジネスをサポートする仕事をしている人)
その次は、物理学の研究者で学生たちに徹底的に文章表現やプレゼンテーションの技術を
教え込んでいる人。
二人とも、立って、聞いている人の顔を見ながら、原稿を読み上げることなく
話していました。

この発表スタイルは、フランスで発表していたフランスの研究者に特徴的な
発表スタイルでもありました。

文系の教員は、いろいろなうまさの程度はありましたが、みんな座ったままで
用意されたレジュメを読みつつ、時々脱線しながらも、ほぼその予定通りの
話をしていました。

話すこと聞くことの教育は、理系の人や企業の人がやったほうがいいでしょう。
彼らは、本当の実践の中で学んでいます。磨かれています。
国語教育の中で「実の場」なんていいながらやっていることなんて
なんと ちんけなことやってんだろうと、思いました。

話すこと聞くことの教育を国語科でやるとしたら、あとは、「虚の場」しかありません。
「虚の場」の国語教育を、私は考えていこうと思います。

ただし、「虚の場」といっても、決して文学教育ではありません。
あんなものは、せいぜい、教師の自己満足という「実の場」を設定するものでしか
ないんですもの。

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